心理士カウンセラーのブログ
Psychological counselor Weblog
いわゆる普通に戻ってほしいと願う親御さんへ。そして、「その普通がつらい」と感じているキミへ。
2026.04.14
「今日は学校に行けそう?」
朝、そう聞きたい気持ちはあるのに、親御さんは言葉を飲み込む。
その気配を感じたお子さんは、さらに布団を深くかぶる。
香川県内でも、こうした朝を迎えているご家庭は少なくありません。
親御さんが願っているのは、決して特別なことではないはずです。
「普通に高校へ通って、普通に友達をつくって、普通に卒業してほしい」
それは親として、とても自然な願いです。
けれど、
その“普通”が、ある子にとってはとても苦しく、遠いものになってしまうことがあります。
今回は、心理学や発達理解の視点も交えながら、
親御さんの思いと、お子さんのつらさ
その両方に寄り添いながらお話ししたいと思います。
「普通」という言葉が、子どもを苦しめることがある
私たちは日常の中で、つい「普通」という言葉を使います。
「朝決まった時間に起きる。」
「学校へ行く。」
「集団の中でうまくやる。」
「苦手なことも我慢して頑張る。」
もちろん、これらは社会の中で生きていくうえで大切な力でもあります。
しかし、すべての子どもが同じやり方でそれをこなせるわけではありません。
ある子にとっては当たり前にできることが
別の子にとっては、毎日全力疾走を続けるくらい苦しいこともあります。
周囲からは
「甘えているように見える」
「やればできるのでは」と思われやすいのですが、
本人の中ではすでに精一杯ということも少なくありません。

【子どもによって、学び方も疲れ方も違う】
― 認知の特性は一人ひとり違います ―
心理学や教育の分野では、人それぞれに情報の受け取り方、考え方、覚え方、疲れやすさに違いがある
ことが知られています。
近年は、こうした違いを「神経多様性(ニューロダイバーシティ)」という考え方で理解しようとする動
きも広がっています。
たとえば、WISC-Ⅴなどの認知検査では、子どもの得意なことと負担がかかりやすいことの傾向が見え
てくる場合があります。
たとえば、次のような傾向です。
言葉の理解や表現は得意でも、相手の意図や空気を読むのが苦手。
図や配置をとらえることに負担があり、板書やノート整理が難しい。
考える力はあるのに、複数の情報を一度に処理するのが苦手。
一時的に覚えておく力が弱く、口頭指示が抜けやすい。
理解はしていても、書く・写す・終わらせるまでに時間がかかる。
このような凸凹があると、一斉授業の速さ、宿題の量、時間に追われるテスト、周囲との比較が本人に
とって非常に大きな負担になります。
つまり、
周りからは「努力不足」に見えても、実際にはやる気の問題ではなく、その環境では力を発揮
しにくい状態であることがあるのです。
ここを見誤ってしまうと、子どもは「頑張ってもできない」「自分はダメなんだ」という思いを深めてし
まいます。
親御さんの願いは「愛情」でも、お子さんのつらさもまた「事実」です。
ここで大切なのは、親御さんが「普通に戻ってほしい」と願うこと自体は、決して間違いではないとい
うことです。
親御さんが抱える強い不安、親御さんは、こんな不安を抱えやすいものです。
このまま高校に行けなかったらどうなるのだろう?将来、社会に出て困るのではないか?
今ここで立て直さないと、取り返しがつかなくなるのではないか?
こうした不安は、お子さんをとっても大切に思っているからこそ生まれます。
だからこそ、「何とか今の状態を変えたい」と思うのは自然なことです。
ただ、強い不安があると、親はつい“今の子どもの苦しさ”よりも、
“将来の心配”の方を優先してしまうことがあります。
一方で、お子さんが感じている苦しさは、外から見える以上に深い場合があります。
たとえば、音や人の気配に強く反応してしまい、教室にいるだけで疲れ切る。
朝になると体が重く、起き上がろうとしても起き上がれない。
文字を読むこと、書くこと、話を聞き続けることに強い負担がある。
ずっと周囲に合わせてきた結果、心も体も限界にきてしまった。

こうした背景には、感覚の敏感さ、発達特性、起立性調節障がい、学習上の困難さ、
不安の強さなど、さまざまな要因が関係していることがあります。
また、
今まで「ちゃんとしなきゃ」「期待に応えなきゃ」と頑張り続けてきた子ほど、
限界が来たときに、急に動けなくなることがあります。
これは単なる甘えではなく、心や体が「これ以上無理をすると壊れてしまう」
とブレーキをかけている状態とも考えられます。
「学校に戻す」ことだけが、正解ではありません。
不登校、発達障がい、グレーゾーン。こうした言葉に、
強い不安を感じる親御さんも多いと思います。
けれど、これらは人生の終わりを意味する言葉ではありません。
むしろ、その子に合った学び方や育ち方を探すための出発点になることがあります。
大切なのは、「みんなと同じ形に戻すこと」ではなく、
「その子が無理なく前に進める環境を見つけること」です。
子どもが立ち直るために必要なのは、まず「安心できる場所」です。
心理学では、困難の中でも回復していく力を「レジリエンス」と呼びます。
この力は、根性だけで育つものではありません。
むしろ、安心できる人や場所があることが、回復の土台になると考えられています。
「今のあなたではダメ」ではなく、
「今つらいんだね」
「あなたに合う方法を一緒に探そう」
そう言ってもらえることが、子どもにとって大きな支えになります。
親御さんが「今のままでも大丈夫」と言うことは、あきらめではありません。
それは、お子さんが自分を責めすぎず、もう一度立ち上がるための安全基地をつくることです。
【松陰高等学校が考える第3の道】

私たちは、「全日制高校に今すぐ戻ること」だけを唯一の正解だとは考えていません。
もちろん、全日制高校が合うお子さんもいます。
しかし、今の環境が合わず、心や体に大きな負担がかかっているお子さんにとっては、
別の形の学びの場が必要なことがあります。
通信制高校は、単に“通えなかった子の受け皿”ではありません。
その子の特性や体調、ペースに合わせながら、高校卒業資格を目指すことができる、
現実的で合理的な学びの選択肢です。
通信制高校だからこそできる支援があります。
松陰高等学校の大きな特徴は、
「一律に合わせる」のではなく、「その子に合う形を探しやすい」ことです。
たとえば、朝が特につらいなら、登校時間を調整する。
大人数が苦手なら、少人数や落ち着いた空間で学ぶ。
一斉授業が負担なら、個別に進める。
体調に波があるなら、無理のないペースで単位取得を考える。
比較され続ける環境ではなく、自分の進み方を大切にする。
こうした積み重ねによって、できなかった経験が多かった生徒が少しずつ
「これならできるかも」という感覚を取り戻していきます。
私たちが大切にしているのは、
「できない理由」ではなく「できる条件」を探すことです。
松陰高等学校 高松校・丸亀校では、生徒一人ひとりの特性や状況を丁寧に見ながら、
「どうすれば学びやすくなるか」を一緒に考えています。
たとえば、板書が苦手なら、ノートの取り方を工夫する。
静かな場所の方が集中しやすいなら、学習環境を調整する。
一度に多くを求められると止まってしまうなら、課題を小さく分ける。
対面だけが難しいなら、オンラインや別室などの方法を考える。
大切なのは、「この子には無理」と決めつけないことです。
環境が変われば、動き出せる子はたくさんいます。
「普通」を手放した先に、本当の成長が見えてくることがあります。
親御さんが「みんなと同じでなければ」という思いを少し緩めた時、
子どもに変化が起こることがあります。
自分の苦手さを言葉にできるようになる。
無理のない頑張り方を覚える。
少しずつ自信を取り戻す。
学ぶことへの拒否感が薄れてくる。
将来のことを、自分の言葉で考え始める・・・
これは、単に高校卒業資格を取るという話ではありません。
「自分は何が苦手で、何なら頑張れるのか」
「どういう環境なら力を出しやすいのか」
そうした自己理解を深めていくことは、社会に出てからも大きな力になります。
【中学校の先生へ…】

中学校の先生方もまた、日々とても難しい立場におられると思います。
学校としては、出席、進路、学力、集団適応など、
さまざまな視点を持ちながら生徒を見なければなりません。
その中で、「できれば元の学校生活に戻してあげたい」と願うのは当然のことです。
一方で、同じ支援が全ての子に合うわけではありません。
励ましが力になる子もいれば、励ましそのものがプレッシャーになる子もいます。
登校刺激が有効な場合もあれば、それによってさらに自己否定が強まる場合もあります。
だからこそ、「学校に戻れるか」だけではなく、
「その子が安心して学びを続けられる場はどこか」という視点を、
家庭・学校・進路先で共有できることが大切だと私たちは考えています。
松陰高等学校 高松校・丸亀校は、中学校の先生方とも連携しながら、
生徒にとって無理のない進路選択を一緒に考えていきたいと思っています。
【保護者の方へ、今できる3つのこと】
もし今、先が見えず苦しい中におられるなら、まずは次の3つを意識してみてください。
1.「説得」より「情報収集」
お子さんを無理に動かそうとする前に、親御さん自身が選択肢を知ることが大切です。
知ることで、焦りは少しずつ整理されていきます。
2.親御さん自身が消耗しすぎない
子どものことが心配で、頭がいっぱいになるのは当然です。
でも、親御さんが疲れ切ってしまうと、家庭全体が苦しくなります。
少しでも休む時間、自分の心を整える時間を持ってください。
3.一人で抱え込まない
医療、心理、学校、進路先。使える支援は、遠慮なく使ってください。親が頑張りすぎなくていい形を一緒に作ることも、とても大切です。
最後に、親御さまは「普通に戻してあげたい」という思いは、愛情です。
でも、その愛情を、「今のこの子に合う道を探す力」に変えていけたら、
その子の未来は大きく変わるかもしれません。
そして当事者である生徒のキミへ…
「普通がつらい」と感じるのは、君が弱いからではありません。
今いる環境ややり方が、君に合っていないだけかもしれない。
合わない靴で無理に歩けば、誰だって苦しくなります。
だから必要なのは、根性ではなく、君に合う靴を探すことです。
松陰高等学校 高松校・丸亀校は、その“新しい靴”を一緒に探し、
一緒に歩き始めるための場所でありたいと考えています。

個別相談のご案内
不登校、発達特性、学習面の不安、集団への苦手さ、朝起きられないことへの悩み。
そうしたことで進路に迷っているご家庭は、どうぞ一度ご相談ください。
学校の雰囲気を知りたいどんな学び方ができるのか知りたい、
今の状態でも高校進学は可能か相談したい方はまずは、
お子さんと親御さんのお話を丁寧に伺うことから始めます。
補足:WISC検査の結果について
松陰高等学校 高松校・丸亀校では、
WISC-ⅤやWISC-Ⅳなどの検査結果を参考にしながら、
お子さんにとって学びやすい環境や支援の方向性を考えることがあります。
ただし、検査結果は「その子を決めつけるためのもの」ではありません。
大切なのは、点数そのものではなく、その子がどんな場面で困りやすく、
どんな工夫が力になるのかを理解することです。
子どもの特性は、苦しさの原因になることもありますが、
見方と環境が変われば、強みとして生きることもあります。
検査結果の見方や活かし方についても、必要に応じてご相談いただけます。
それではまた。。。 松陰高等学校 高松校・丸亀校
☎087-813-3781
✉info@kagawa-mirai.jp