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【自閉症スペクトラム障害(ASD)を抱える子どもの反抗期の対応のしかた】

2025.02.17

昔から反抗期の子どもを育てるのは本当に大変です。

さらに自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの

反抗期はその大変さが2倍にも3倍にも膨れ上がります。

では、

自閉症スペクトラム障害(ASD)を抱える子どもの

反抗期に対して保護者はどのように関われば良いのでしょうか。

詳しくご説明しましょう。

《なぜASDの子にも反抗期があるのか?》

まず大前提として、「反抗期」は

どの子にも起こりうる成長過程の一つです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)を

持っているかどうかにかかわらず、

子どもは思春期に近づくにつれ、

自分の考えを主張したり、

大人の意見に反発したりするようになります。

これは自立へ向かう自然なプロセスでもあり、

「親の支配から離れ、自分で考えて行動したい」

という気持ちが強くなるからです。

ただし、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもは

特性として以下のような要素を抱えているケースが多いです。

コミュニケーションの困難さ

(自分の気持ちをうまく言葉にできない、相手の意図を読み取りにくい など)

想像力や社会性の偏り

(相手の立場に立った理解が難しい、場の空気を読むのが苦手 など)

感覚過敏・鈍麻

(騒音や光などの刺激に敏感、または逆に鈍感 など)

こうした特性ゆえに、いざ「反抗期」を迎えたときに、

一般的な子ども以上に混乱やトラブルを

生じやすいということがあります。

親としては「普通の反抗期以上に手こずる」

「でも、どこまで厳しくして良いのかわからない」

と戸惑うことも多いでしょう。

しかし、自閉症スペクトラム障害(ASD)の子も

気持ちだけは「もっといろいろできるようになりたい」

「親に頼らずにやってみたい」という思いが膨らむ時期です。

このギャップをどう埋めていくかが、

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもの

反抗期対応の大きなカギとなります。

《ASDの特性がもたらす反抗期の特徴》

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもに見られる反抗期は、

一般的な反抗期の様相と似ている部分もあれば、

独特の困りごともあります。

例えば、以下のようなことが典型的です。

自己主張が極端になる

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子は

論理的に物事を考えやすい反面、

自分のやり方・ルールを頑なに守ろうとする傾向があります。

「なぜそれをしなければならないのか?」

という納得理由が見えないと、

非常に強く反発することがあります。

感情表現が読み取りにくい・伝えにくい

「嫌」「不快」「つらい」と感じていても、

それを適切な言葉や態度で表現できず、

結果として激しい態度に出てしまうことがあります。

あるいは逆に、表情や声のトーンが淡白で、

反抗しているのかどうか親が判断しづらいケースも。

ルーティンやこだわりが崩されるとパニックになる

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子は、

生活の安定や予測可能性を好む場合が多いため、

思春期特有の環境変化や身体の変化に

余計にストレスを感じやすいです。

そのストレスが「反抗」という形で

顕在化する場合もあります。

親の言動を文字通りに受け取りやすい

「これぐらい言わなくてもわかるだろう」

という曖昧な指示は通じにくく、

結果的に子どもの混乱を招き、

「そんなの聞いてない!」と強く反発されることがあります。

こうした特徴を理解しておくと、

「今、子どもは何に対して不満を持っているのだろう?」

「どのくらい正確に情報が伝わっているのだろう?」

と考えを巡らせやすくなります。

《親としての悩み:反抗期のASDの子をどう理解すればいいの?》

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもが反抗期を迎えると、

親はしばしば以下のような悩みを抱えます。

叱ると余計に反発されそうで怖い

言っても理解してくれないのでは?

今までのルールが通用しなくなった…

どこまで自主性に任せるべきかわからない

特に「自主性を尊重したいけれど、任せて大丈夫だろうか?」

という葛藤は多くの自閉症スペクトラム障害(ASD)の

お子さんを持つ親が感じることだと思います。

単に「じゃあ好きにしていいよ」と任せてしまうと、

想像力や社会性の面で配慮が必要な自閉症スペクトラム障害(ASD)の子は、

無自覚に危険な行動をとってしまう可能性もあります。

また学業面や日常生活のスキルについても、

本人が「やりたくない」と強く拒否した場合、

どこまで親が促すべきか判断に迷うでしょう。

ここで大切なのは、

「完全に放任する」

「全面的に親がコントロールする」

のどちらかではなく、

適度なルール作りをしたうえで、

その範囲内で子どもの選択肢を広げてあげることです。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子にとっては、

自分がどこまで自由にやっていいのか、

どこから先はやってはいけないのかを明確に視覚化し、

共有することが重要です。

《やらせたいけれど任せきれないジレンマの理由》

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもが反抗期に入ると、

多くの親御さんが「自立のためにいろいろやらせたいけれど、

特性もあるから放任できない…」というジレンマを抱えます。

例えば、以下のような日常場面があるでしょう。

外出時の交通ルールの理解

周囲の状況を読むのが苦手な自閉症スペクトラム障害(ASD)の子は、

車や信号のリスクを正しく判断できないことがあります。

しかし、いつまでも親が付き添ってばかりでは

本人の自立を妨げる気もする…。

お金の管理

自分の好きなものにだけ集中してお金を使い込んでしまい、

必要な支払いに回らない。

しかし、だからといって小遣いを一切与えないのは、

自立のための学習機会を失わせる…。

SNSやネット利用

自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性で

コミュニケーションを文字だけで行う方が

楽という子も少なくありません。

しかし、一歩間違えばトラブルに巻き込まれやすい。

どこまで自由にさせるか難しい…。

このように「やらせないと身につかない」けれど

「やらせると危なっかしい」という矛盾を抱えるのが、

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子の

反抗期が親を悩ませる大きな原因です。

では、どう対処していけばいいのでしょうか。

《具体的な対応策(1)―子どもの「大人になりたい」気持ちを尊重する》

大人への入り口として「役割」を与える

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもが反抗期に抱く

「大人になりたい」

「もっとできることを増やしたい」

という気持ちは、

モチベーションを引き出す大きなチャンスでもあります。

まずは家庭内で「お兄さん・お姉さんとしての役割」

を明確に示してあげるとよいでしょう。

たとえば、食器を運ぶ、お風呂の湯をためる、

ペットの餌やりなど、家庭生活の一部を“担当”させるのです。

「あなたももう○年生だし、この仕事は任せるね」と伝えることで、

子どもは

「自分はもう子ども扱いされていない」

「責任を与えられた」と実感します。

こうした成功体験の積み重ねが、

「いろいろなことにチャレンジしてみたい」

という気持ちをプラスに育ててくれます。

必ず「達成感」を感じられるフォローを

一方、ただ仕事を与えっぱなしにすると、

自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性で

うまく段取りが組めず失敗してしまうケースもあります。

そこで、最初は親がプロセスを見守りつつ

サポートしてあげるとよいでしょう。

分かりやすいチェックリストや図解、タイマーなどを活用し、

段階的にこなす手順を示してあげるのがポイントです。

慣れてきたらサポートを減らしていき、

最終的には子どもが「自分一人でできた」

と思える状態に導きましょう。

《具体的な対応策(2)―ルールやスケジュールの「見える化」》

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子は曖昧な指示が苦手

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子は

「なんとなくやっておいて」

「頃合いを見てやってほしい」

などの曖昧な指示では行動に移りづらく、

反発の原因になりやすいです。

反抗期の子どもは元々

「親の言うことなんて聞きたくない」という心理が強いので、

なおさらトラブルになるでしょう。

そこで、ルールやスケジュールを

“見える化”することが非常に効果的です。

具体的には、

・1日のスケジュールをホワイトボードやカレンダーに書き出す

・宿題や家事などの締め切り・優先順位をリスト化して明確にする

・「やってほしいこと」「やってはいけないこと」を箇条書きで示す

という形です。

具体的なタイムラインと優先度

たとえば「夕飯までに宿題を終わらせてね」

と言うだけでは曖昧です。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子は

「夕飯が何時からなのか」

「宿題をどれくらいのペースでやればいいのか」

をイメージしにくい場合があります。

そこで「夕飯を18時30分に始めるから、

そこまでに国語のワーク2ページと

英語の単語テスト勉強を終わらせようね」

と具体的に伝えます。

そのうえで、達成したら

「チェックリストに✓を入れる」など、

視覚的にゴールがわかる仕組みを作ると、

子どもも自発的に動きやすくなります。

《具体的な対応策(3)―“口出し”と“見守り”のバランスを工夫する》

必要最低限のところだけ親が口を出す

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもは

反抗期に限らず、親の口出しが多いと

強い反発を示すことがあります。

「自分でやりたい気持ちがあるのに、いちいち注文を付けられる」

と感じるからです。

とはいえ、「完全放任」ではトラブルになるリスクも…。

そこで、「ここだけは絶対に守る」

「ここまでなら自由にやっていい」

というラインを親子で相談し、

親が最小限のサポートだけを行う形を目指します。

見守りの際のポイント

“見守る”といっても、

ただ放置してしまうのではなく、

子どもが困ったときにはすぐ

手助けできる距離にいることが大切です。

たとえば宿題や家事の手順を提示したら、

親は別の作業をしながらちらっと様子を見て、

明らかに行き詰まっているようであれば

「大丈夫?分からないところある?」と声をかける。

あくまで主体は子どもにあるという姿勢を崩さず、

「手を貸そうか?」と声をかける程度が適切です。

《具体的な対応策(4)―自己主張を上手に引き出すコミュニケーション》

「主張することは悪くない」と伝える

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子は

「自分の気持ちを伝えていいんだ」

「主張していいんだ」という感覚が薄い場合があります。

一方で反抗期には強烈に意見を

押し通そうとするケースもあるため、

親としては「言いたいことは言ってもいいんだよ。

ただし、言い方やタイミングは考えよう」

と教える必要があります。

たとえば、「あなたの意見を聞かせてほしい」と前置きをしたうえで、

いきなり否定せずに最後まで話を聞く姿勢を取りましょう。

その後に「ママはこう思うけど、あなたはどう考える?」と問いかけ、

対話のキャッチボールを大切にします。

Iメッセージでのフィードバック

注意や指摘をするときは「なんでそんなことするの!」

「あなたっていつもそうだよね!」とYOUメッセージを使うと、

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもは

「人格を否定された」と受け止め、

激しく反抗する可能性が高くなります。

代わりに「私はこう感じた」

「ママとしてはここが心配」とIメッセージで伝えるほうが、

子どもに受け入れられやすいです。

たとえば、ネット利用が長すぎる子に対しては、

「そんなに長くゲームばかりしてると身体に悪いじゃない!」ではなく、

「ママは、夜遅くまでゲームをしていると

明日学校で疲れないか心配になるの」と伝えると、

子どもも「心配してくれているんだ」と理解しやすくなります。

《母としてのスタンスと心がまえ》

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもが反抗期を迎えると、

どうしても親子間の衝突が増え、

親としては頭を抱えるシーンが多くなります。

しかし、それはお子さんが

「自分で考え、行動し、責任を持てる大人になりたい」

というサインでもあるととらえてみてください。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性は残りつつも、

子ども自身が一歩ずつ成長したいと願っているのです。

最も大切なポイントは、

「必要な部分だけをサポートしながら、可能な限り自主性を尊重する」

というバランスを取ること。

 完全に放任すればリスクが高まりますし、

過度に干渉すれば反発が激しくなります。

そこで、

ルールや目標を明確化し、“見える化”する

役割や責任を与え、成功体験を積ませる

コミュニケーションではIメッセージを意識し、子どもの意見をまずは受け止める

必要に応じて専門家や第三者の力を借りる

といった工夫をぜひ取り入れてみてください。

自閉症スペクトラム障害(ASD)の子どもにとっても、

反抗期は「自分なりの自立」を考える大切な時期です。

母としては「子どもの話をゆっくり聞き、

納得するプロセスを一緒に創っていく」

姿勢を大事にしましょう。

結果として、「親にコントロールされる」のではなく、

「自分で考えて行動した」という成功体験を積むことで、

子どもは将来に向けて大きく成長します。

もちろん、すぐにうまくいくことばかりではありませんし、

衝突やイライラの連続かもしれません。

しかし、失敗やトラブルも含めて、

反抗期は子どもが大人の世界へ踏み出すための練習期間なのです。

親である私たちも、子どもがなぜ反抗しているのかを冷静に分析し、

必要に応じて声かけや環境調整をしながら、

その成長を見守っていきたいですね。

反抗期は終わるものですが、

自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性は

一生続く可能性があります。

思春期・青年期以降も、自分の特性とどう付き合っていくか、

お互いに考えていくことが大切です。

焦らず、子どものペースに寄り添いつつ、

時にはプロのサポートを借りて、

家族みんなでよりよい関係を築いていければと思います。

《最後に…》

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